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LOGzeudon

名古屋で働いているWebデザイナーのブログです

「ポンピドゥー・センター傑作展」を鑑賞する時にオススメの視点

日記

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東京都美術館にて開催されている「ポンピドゥー・センター傑作展」を見てきました。

「シャガールやピカソなど人気の高い作家の作品も集結!」という謳い文句に、ポスターもポップで華やかなので、普段は美術館に行かない人も多く訪れたのではないでしょうか。
ただ、実際にまわってみると「美術や芸術に興味がない人」にはとっつきにくい作品が多かったように感じました。

せっかくなので、そんな人でも意識すれば楽しめるであろう3つのポイントを、自分なりに挙げてみます。

ちなみに会場の様子は、Pen OnlineさんがBlogにて紹介されています。

www.pen-online.jp

「鑑賞」のオススメポイント

① 一つひとつの「作品」とじっくり向き合うこと

その作品が持つ質感、サイズ感、筆や指のタッチ、色彩、造形美など、思いつく限りいろんな視点から見てみるとおもしろいです。わざわざ美術館まで来て見るわけですし。

そしてただ「眺める」だけでなく、作品に向き合あい、その表現や意図をくみ取り、受け入れ、自分なりの価値を見出してみる。つまり、作品に対して自分なりの視点から「なぜ?」を問いかけてみるのをオススメします。

どんな作品であれ、対峙した時に「何かしら」感じているはずです。「なぜ?」そう感じたのかを、自分自身に問いかけてみるのです。
「この作品は嫌いだ。なぜ?」「全然よさがわからない、でも展示されている、なぜ?」「大きく描かれているモチーフより隅っこのモチーフのほうが気になった、なぜ?」「1色しかない絵なのに感動した、なぜ?」…。

そんな「鑑賞」の過程では、作品を通じて新しい自分に出会うこともあります。芸術(特に今回展示されているような作品)鑑賞の醍醐味はそんなところにもあると思っています。

ちなみに、「鑑賞」や「芸術」に、歴史・文脈はあっても正解はありません。
「哲学」は学問というより生きる「態度」だと言われますが、「芸術」も同じだと思っています。
フランス流はじめての名画の見方」という本に「鑑賞」のことが楽しく書いてあってオススメです。子ども向けの扱いですが、大人が読んでも楽しめます。

②「作家」自身の言葉を味わう

作品と一緒に、作家の「ポートレート(写真)」と「ひと言(名言的なもの)」が展示されていました。
目録の中に、会場構成を担当された田根剛さん(建築家)のメッセージが書かれているので、引用します。

20世紀芸術を概観するような展覧会の中で、まず最初に考えたのは「鑑賞」の仕方についてでした。作家の言葉を用いた展示を日本主催者が提案したことを受け、会場で作品を鑑賞するにあたり、単に作品を見るというだけでなく、「作家」を知るためにポートレートを、「考えに触れるため」に1作家・ひと言を展示に付け加えました

例えば、個人的に印象的だった作品は「1930年」「カミーユ・ボンボワ」の「旅芸人のアスリート」という絵画。

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くまみたいなおじさんが、巨大でまんまるなダンベルを片手で持ち上げているが、まわりの観客は無表情…という絵です。
ふわっとしたタッチと、全てに焦点が合っている不思議な遠近感。観客からのチップ?をおじさんがガン見しているのもおもしろい。
ユーモラスなだけでなく、その風景を切り取った作家の感性も気になりました。

そして作家を見てみます。

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日曜日にはモンマルトルを歩いたものだ。そこには沢山の絵描きがいて、それが面白くて、私も絵を始めた

描いた人もゆるふわな優しそうなおじさんだ!!

後で調べたら、ボンボワ氏は「素朴派」の一派で、もともと美術教育を受けていないそうです。
そして、船頭の息子で力持ちだった彼は、実際にサーカスで重量挙げをしていたこともあり、パリで工員などをしながら絵を描いていたそうです。なるほど興味深い。

こんな感じで、作家の「ポートレート」と「ひと言」が、その作品の魅力を引き出してくれています。
気になった作家やひと言もメモしておいて、帰ってからその人生や哲学を調べると更なる発見や出会いがあるはずです。

③「芸術」を「戦争」という視点から見る

ポンピドゥー・センターは、1977年に開館したフランスの総合文化施設です。
今回の企画では、展示作品に以下の制約がありました。

  • ポンピドゥー・センターのコレクションであること
  • 1906年から77年までの期間にフランスで生み出された作品
  • 1年毎1作家1作品

「フランス芸術の歴史」「ポンピドゥー・センターの意図」といった視点で作品群を見られることがユニークです。そして、その期間に終結した第2次世界大戦の影響も見逃せません。

「フランスで生み出された作品」が展示条件なのに他国の作家の作品が多いのは、戦争で移住した作家が多かったからです。
若くして、戦時中に命を落とした作家の作品も展示されています。そして、1945年は作品展示がありません。

「戦争」の悲惨さを暗に感じ取れる展示でした。芸術と戦争の歴史はある意味一体なのでしょう。
戦争で、どんな風に芸術の流れが変わったのか。展示されている作品にどんな想いを寄せ、どんな解釈を導くのかは鑑賞者に委ねられています。

まとめ

「これぞ芸術展示」といいますか、見る人によって評価が大きく変わる内容だったと思います。
ただ、ポンピドゥー・センターという視点からフランスの近代芸術を俯瞰できる、という点では間違いないですし、個々の作品も考えさせられるものばかりです。

この展示ではフランスが舞台ですが、戦後はニューヨークなど別の場所でも芸術は盛んになっています。一人ひとりの作家や、芸術派ごとに深く調べてみるとまた違った発見があるはず。
そんな、芸術世界の探求へと足を踏み入れるきっかけとしても良い展示だったかと思います。

ちなみに私はあんまり美術史に興味がなかったのですが、「作家」と「ひと言」があったからか作品にやけに興味がわき、その流れでフランス美術史にも興味がわきました(つい目録も買ってしまった)。行って良かったです。

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